歩行訓練士とは、視覚に障害のある人の歩行や生活を支える専門職です。この記事は、仕事内容やなり方を知りたい方に向けて解説します。歩行訓練士は、目の見えない人や見えにくい人を指導・支援します。白杖(はくじょう。視覚障害者が前方を確認しながら歩くための白い杖)を使った歩行や、日常生活に必要な動作の習得を助けます。正式には視覚障害生活訓練等指導者と呼ばれ、視覚障害リハビリテーションの中心的な存在です。理学療法などの一般的な「歩行訓練」とは異なり、視覚障害のある人を対象とする点が大きな特徴です。仕事内容や歩行訓練の中身、活躍の場、養成課程となり方、資格の位置づけまで、2026年7月時点の最新情報で解説します。
記事でわかること
この記事でわかること
- 歩行訓練士(視覚障害生活訓練等指導者)とは何か
- 歩行訓練士の具体的な仕事内容と活躍の場
- 歩行訓練(白杖歩行など)の中身
- 歩行訓練士になる方法と2つの養成課程(2年)
- 国家資格ではなく認定資格である点
歩行訓練士とは
歩行訓練士とは、視覚に障害のある人へ生活訓練を提供する専門職の通称です。見えない・見えにくいことで生じる生活上の不安や困難を、訓練で軽減します。正式名称は視覚障害生活訓練等指導者です。養成課程を修了した人は視覚障害生活訓練専門職と呼ばれます。仕事の中心は、白杖を使った単独歩行を身につけてもらう「歩行訓練」です。ただし、それだけにとどまりません。点字やパソコン操作を学ぶコミュニケーション訓練、調理や掃除などの日常生活訓練まで、視覚障害のある人の自立を幅広く支えます。
「歩行訓練」と聞くと、けがや病気で弱った足の機能を回復させるリハビリを思い浮かべるかもしれません。しかし歩行訓練士が担うのは、視覚に障害のある人が安全に目的地まで移動できるようになるための訓練です。目の機能そのものを治すわけではありません。視覚以外の感覚や情報を活用し、その人らしく移動・生活できる力を育てる支援だと考えるとわかりやすいでしょう。視覚にかかわる専門職には、視機能の検査やリハビリを担う視能訓練士(ORT)もあり、歩行訓練士と連携することがあります。
歩行訓練士の主な仕事内容
歩行訓練士の仕事は、所属する施設によって幅があります。一般には、次の3つの訓練が柱になります。
- 歩行訓練:白杖を使った単独歩行、人と歩く手引き誘導、屋内の移動、保有視覚を活用した歩き方などの指導
- コミュニケーション訓練:点字の読み書き、音声読み上げを使ったパソコン・スマートフォン・タブレットなどのICT訓練
- 日常生活訓練:食事の準備、お金や衣服の管理、掃除・洗濯、身だしなみの確認など、生活動作の練習
これらに加えて、本人やご家族からの困りごとの相談にも応じます。拡大読書器や拡大鏡などのロービジョン機器(弱視の人の見え方を補う器具)の使い方を教えることもあります。さらに、地域の施設・団体の紹介や、福祉制度・福祉サービスの情報提供も行います。生活全体を見渡しながら支援する点が特徴です。なお、外出時の付き添いを担うガイドヘルパー(同行援護従業者)とは役割が分かれます。歩行訓練士は「移動の技術を身につけてもらう訓練」を担当します。
歩行訓練(歩行訓練士の中心業務)とは
歩行訓練士が指導する歩行訓練は、白杖を用いて外を歩く方法が中心です。とはいえ、単に杖の使い方を教えるだけではありません。聴覚・触覚・嗅覚など、視覚以外の感覚を活用します。周囲の環境から情報を集めて状況を把握し、進む・止まる・曲がるといった行動を自分で判断していきます。これは「オリエンテーション」と呼ばれる過程で、訓練を通じて身につけてもらいます。
歩く方法は一人ひとり異なります。生まれつき見えにくい人と、人生の途中で見えにくくなった人とでは、必要な訓練が違います。年齢や生活経験によっても、最適な方法は変わります。そのため歩行訓練士は、状況に合わせて訓練内容を組み立てます。屋内を一人で歩く方法、ロービジョン(弱視)の人が残された視覚を活かして歩く方法、夜間に歩く方法などです。なお、盲導犬と歩くための訓練は、盲導犬訓練士という別の専門職が担当します。
歩行訓練士が活躍する場
歩行訓練士は、視覚に障害のある人を支えるさまざまな現場で必要とされています。主な勤務先は次のとおりです。
- 国立障害者リハビリテーションセンターなどのリハビリ施設
- 視覚障害者の入所・通所施設、点字図書館・視聴覚障害者情報提供施設
- 盲学校(特別支援学校)
- 自治体の障害福祉担当部署、社会福祉協議会
- 盲導犬協会、当事者団体、民間企業など
訓練の受け方には、施設に宿泊して集中的に学ぶ「入所」、定期的に通う「通所」、自宅などへ歩行訓練士が出向く「訪問」があります。実施主体や地域によって、利用方法や費用が異なります。一方で、歩行訓練士は全国的に人数が不足しているのが現状です。2026年1月10日の読売新聞の報道によると、実業務にあたる歩行訓練士は全国で約200人(91機関189人)にとどまり、4県では実質ゼロ、12県は1人という状況です。養成機関が全国に2か所しかなく後進の育成に時間がかかることが背景にあり、地域によっては訓練の利用開始まで長期間待つケースもあると指摘されています。視覚障害のある人の自立を支える専門職として、今後さらに養成と配置の充実が求められています。
歩行訓練士になるには
歩行訓練士になるには、養成機関で決められたカリキュラムを履修し、修了する必要があります。国内には次の2つの養成課程があります。いずれも履修期間は2年間で、主に大学卒業者を対象としています。
- 社会福祉法人日本ライトハウス 養成部(大阪市)/視覚障害生活訓練等指導者養成課程
- 国立障害者リハビリテーションセンター学院 視覚障害学科(埼玉県所沢市)
カリキュラムは3つの科目で構成されます。福祉・心理・教育・医学を学ぶ基礎科目、ロービジョンや重複障害などを学ぶ専門科目、実技や演習で訓練技術と指導法を学ぶ実践科目です。臨床実習や卒業研究まで含めた履修時間の総計は、約3,000時間に及びます。実技では、受講生自身がアイマスクやシミュレーションゴーグルを着けます。見えにくさを体験しながら、適切な指導ができる力を身につけます。なお日本ライトハウス養成部では、視覚障害リハビリテーション関連施設の職員(盲学校を含む)を対象に、分割履修などの特別措置も設けられています。
受講にあたっては、基礎学力や指導者としての資質を確認する審査があります。受講中は多くの課題や自習に取り組む必要があります。そのため、継続的に粘り強く学ぼうとする意欲も求められます。視覚にかかわる訓練の専門職という点で、リハビリ職である理学療法士(PT)と比較されることもあります。ただし理学療法士が国家資格であるのに対し、歩行訓練士は養成課程の修了によって得られる専門職である点が異なります。
歩行訓練士は国家資格ではない
歩行訓練士(視覚障害生活訓練等指導者)は、国家資格ではありません。資格取得のための国家試験はなく、養成課程のすべてのカリキュラムを修了することで、視覚障害生活訓練専門職として認定される仕組みです。国家資格ではないものの、視覚障害リハビリテーションの現場で専門性が広く認められています。福祉・教育・自治体など多様な分野で活躍できる専門職です。
目指す前に知っておきたい現実とキャリア
歩行訓練士はやりがいの大きい仕事ですが、目指す前に現実も知っておくと判断を誤りません。最大のハードルは、養成課程が全国に2か所しかなく、2年間のフルタイム履修が前提になる点です。働きながらの取得は容易ではありません。進路を決める前に、次の点を確認しておきましょう。
- 学び方:日本ライトハウス養成部か国立障害者リハビリテーションセンター学院の2年課程が基本。在職者向けの分割履修などの特別措置があるかを各養成機関に確認する
- 働く場所:リハビリ施設・点字図書館・盲学校・自治体・盲導犬協会など。求人数は多くないため、勤務地の希望と求人の有無を早めに調べる
- キャリア:視能訓練士や同行援護従業者など視覚障害支援の関連職と連携・兼務する道もある
一方で、追い風もあります。歩行訓練士は全国的に不足しており、実業務にあたる人数は全国で約200人、4県では実質ゼロという状況が報じられています。地域によっては利用待ちが長期化しているのが現状です。だからこそ、視覚障害のある人を支えたい人にとって、専門性を長く活かせる分野といえます。障害福祉の制度や施策は、厚生労働省(障害者福祉)でも確認できます。
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まとめ
歩行訓練士とは、視覚に障害のある人へ訓練を行う専門職です。白杖を使った歩行訓練、コミュニケーション訓練、日常生活訓練を担い、正式には視覚障害生活訓練等指導者と呼ばれます。仕事の中心は白杖歩行の指導です。さらに点字やICTの訓練、生活動作の練習、相談対応まで、視覚障害のある人の自立を幅広く支えます。なるには、日本ライトハウス養成部または国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科の2年課程を修了する必要があります。国家資格ではなく、認定の専門職です。全国的に人数が不足しているため、視覚障害のある人を支えたい方にとって、やりがいの大きい仕事といえます。
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