介護の派遣でも処遇改善加算は出る?時給への反映の仕組みと確認方法

派遣で介護の仕事をしていると、直接雇用の職員だけが「処遇改善手当」を受け取っているように見えることがあります。自分の時給には何も乗っていないように感じる方もいるはずです。

派遣スタッフも処遇改善加算の対象にできます。ただし自動では出ません。施設と派遣会社の両方が動いて、はじめて時給や手当に反映されます。

この記事では、加算がどこから来てどこを通って時給になるのかを整理します。そのうえで、自分の時給に反映されているかを確かめる方法と、反映されていなかったときの動き方まで説明します。

派遣スタッフも対象にできるが、自動では反映されない

厚生労働省のQ&Aは、派遣労働者も処遇改善加算の対象にできるとはっきり示しています。対象にする場合は、施設が派遣スタッフを含めて計画書と実績報告書を作ります。

同じQ&Aには、加算を原資とする派遣料金の上乗せが派遣元から支払われる給与に上乗せされるよう、派遣元と協議することも書かれています。つまり制度としては、派遣スタッフの賃金改善に加算を使う道がきちんと用意されています。

一方で、対象に含めることは義務ではありません。誰にどう配分するかは、基本的に施設の裁量に委ねられています。ここが「出る人と出ない人が分かれる」最大の理由です。

ただし完全に自由というわけでもありません。Q&Aは、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと、としています。同じ現場で同じ業務を担っているのに派遣だけ一律に外す扱いは、この考え方から見て説明が必要になります。

そもそも処遇改善加算とは|誰に、どこから支払われるお金か

処遇改善加算は、介護職員の賃金を上げるために介護報酬に上乗せされるお金です。正式名称は介護職員等処遇改善加算といいます。

大事なのは、加算が支払われる先です。加算は働く人に直接振り込まれるものではありません。まず事業所(施設)に介護報酬として入ります。事業所はその金額以上の賃金改善を行う義務を負います。

金額はサービスの種類と加算の区分で決まります。処遇改善加算を除いた1か月の総報酬単位数に、サービスごとの加算率をかけて計算します。介護職員1人あたりいくら、という決まり方ではありません。

2026年6月の臨時改定で対象と金額が広がった

2026年6月1日に、介護報酬の臨時改定が施行されました。改定率は+2.03%で、うち処遇改善分が+1.95%です。

この改定では、介護職員だけでなく介護従事者を幅広く対象として、月1.0万円の賃上げにつながる措置が取られました。さらに生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員には、月0.7万円の上乗せ措置が加わります。定期昇給分0.2万円を含めると、最大で月1.9万円の賃上げという計算です。

誤解しやすい点
月1.9万円は全員に支給される金額ではありません。制度全体で目指す水準であり、実際の配分は事業所ごとに決まります。

加算の区分や要件の詳細は処遇改善加算 完全ガイドにまとめています。

派遣スタッフの時給に乗るまでの3ステップ

派遣スタッフの場合、加算は施設から直接あなたに渡りません。次の3つの段階を通ります。

STEP.1
施設が対象に含めると決める
処遇改善計画書に派遣スタッフを含めます。動くのは派遣先の施設です。
STEP.2
加算分を派遣料金に上乗せする
施設が派遣会社に支払う派遣料金に、加算分を上乗せします。施設と派遣会社の協議事項です。
STEP.3
派遣会社が給与に反映する
派遣会社が上乗せ分をあなたの時給や手当に反映します。ここまで来て手取りが増えます。

3つすべてがそろって、はじめて手取りが増えます。どこか1か所で止まれば、あなたの時給は変わりません。

止まりやすいのは1段階目です。施設が派遣スタッフを対象に含めなければ、そこで話は終わります。2段階目で料金交渉がまとまらない場合もあります。

派遣会社が加算を受け取っているわけではない

よくある誤解が「派遣会社が処遇改善加算をもらっているのに還元していない」というものです。実際には、人材を派遣する立場の派遣会社が、派遣先の分の加算を受け取ることはありません。加算は介護サービスを提供した事業所に支払われるためです。

介護事業も自社で運営している派遣会社はあります。その場合でも加算が付くのは自社の介護事業所の分であって、他社へ派遣しているスタッフの分ではありません。

派遣会社に入るのは、あくまで施設が支払う派遣料金です。その料金に加算分が上乗せされているかどうかが、実際の論点になります。

直接雇用の職員と何が違うのか

同じ現場で同じ仕事をしていても、雇用のかたちで加算の届き方が変わります。違いを整理します。

項目 直接雇用の職員 派遣スタッフ
加算の受け取り手 勤務先の事業所 派遣先の施設(自分の雇用主ではない)
賃金への反映 事業所が直接、給与に反映 派遣料金を経由して派遣会社が反映
対象になるか 事業所の判断で配分される 施設が対象に含めると決めた場合に限られる
確認先 勤務先の事業所 派遣会社(雇用主は派遣会社)
反映のされ方 基本給・手当・賞与など 時給への上乗せ、または手当

雇用形態そのものの違いは介護派遣で働くメリット7つで詳しく比較しています。

派遣を対象にする場合、施設側にも条件が生まれる

派遣スタッフを加算の対象に含めると、施設側の手間は増えます。計画書と実績報告書に派遣スタッフを含めて作成する必要があるためです。

加算の要件のひとつに、キャリアパス要件Ⅲがあります。経験や資格に応じて昇給する仕組みを整える要件です。この要件を満たす必要がある場合、派遣スタッフについても昇給の仕組みが整っていることが求められます。こうした手間があるため、対象に含めない施設も実際にあります。

自分の時給に反映されているか確かめる4つの方法

反映の有無は、想像ではなく書類で確認できます。上から順に試すと早く分かります。

1.給与明細の手当欄を見る

処遇改善分が手当として分けて支給されている場合、明細に名目が出ます。「処遇改善手当」「特定処遇改善手当」などの記載を探してください。

ただし、時給そのものに含めて支給されているケースもあります。明細に名目がないからといって、反映されていないとは限りません。手当の名目については処遇改善手当の仕組みも参考になります。

2.労働条件通知書と就業条件明示書を確認する

派遣で働くときは、就業開始前に2種類の書面を受け取ります。労働条件通知書(雇用契約書)と、就業条件明示書です。

時給や手当の内訳が書かれているのは、原則として労働条件通知書のほうです。就業条件明示書は、派遣先の名称・業務内容・指揮命令者・苦情の申出先など、派遣就業の条件を示す書面です。実務では両方を1枚にまとめた「労働条件通知書 兼 就業条件明示書」で交付されることも多くあります。

更新のたびに新しい書類が出るので、前回分と並べて時給の変化を見比べてください。2026年6月以降の更新で時給が動いているかは、ひとつの目安になります。

3.派遣会社の担当者に聞く

いちばん確実な方法です。聞く相手は派遣先の施設長ではなく、派遣会社の担当者です。あなたの雇用主は派遣会社だからです。

聞き方に迷う場合は、次のように尋ねると話が早く進みます。

担当者に確認する3つのこと
今の就業先では、処遇改善加算の対象に自分が含まれているか
含まれている場合、時給と手当のどちらに反映されているか
2026年6月の改定を受けて、派遣料金の見直しは行われたか

加算の対象になっているかは、施設が作る計画書で決まります。派遣会社の担当者が施設に確認しないと分からないこともあります。回答に時間がかかっても、催促しすぎず待つほうが結果的に正確な答えが返ってきます。

覚えておくと役に立つ決まりがあります。加算を算定する事業所は、賃金改善の方法を職員に周知することとされています。さらに、賃金改善について照会があった場合は、その職員の賃金改善の内容を書面などで分かりやすく回答することとされています。加算の対象に含まれているなら、内容を確認したいと伝える根拠になります。

4.労使協定方式の賃金水準を見る

派遣スタッフの賃金の多くは、労使協定方式で決まっています。派遣会社が労働者の過半数代表と協定を結び、国が示す一般の賃金水準以上になるよう時給を設定する仕組みです。

この協定書は、働いている派遣スタッフが内容を確認できます。自分の職種と経験年数でどの水準が適用されているかを見ると、時給の根拠がはっきりします。

反映されていないと分かったときの動き方

確認の結果、対象に含まれていなかった場合の選択肢を挙げます。順番に試す価値があります。

派遣会社に働きかけを依頼する

施設に派遣料金の見直しを打診できないか、担当者に相談します。2026年6月の改定で加算率が引き上げられているため、相談を切り出す理由としては説明しやすい時期です。ただし応じるかどうかは施設と派遣会社の交渉次第で、結果は保証されません。

やってはいけないこと
派遣先の施設に自分から直接、賃金の交渉をするのは避けてください。賃金を決めるのは雇用主である派遣会社です。施設に直接申し入れても話は進みません。

契約更新のタイミングで時給を見直してもらう

派遣の時給は、契約更新の前が動かしやすいタイミングです。就業先での実績や取得した資格を材料に、見直しを相談できます。

派遣会社を比べ直す

同じ施設で働いても、派遣会社によって時給は変わります。加算分の還元方針も会社ごとに異なります。

複数の派遣会社に登録して条件を比べること自体は、広く行われている方法です。ただし就業中の場合は、今の派遣会社との契約や就業規則に兼業に関する定めがないかを先に確認してください。今の会社で改善が見込めないなら、選び直すことも現実的な選択肢になります。

よくある質問

処遇改善加算がない施設だと時給は上がらないのですか

加算は時給を決める唯一の要素ではありません。派遣の時給は、労使協定方式の賃金水準や地域の相場、あなたの資格や経験によっても決まります。加算は上げ幅を後押しする要素のひとつと考えてください。

単発や短期の派遣でも対象になりますか

処遇改善加算の制度上、就業期間の長さで対象から外れるという決まりはありません。ただし短期の場合、施設が計画書に含める実務上の手間から対象にしないケースはあります。

なお前提として、30日以内の日雇い派遣は労働者派遣法で原則禁止されています。60歳以上の方、昼間学生、一定額以上の収入がある方が副業として働く場合など、法令で定められた例外に当てはまるときに限って働けます。単発の働き方との比較は介護派遣とスキマバイトの比較記事で整理しています。

看護師や生活相談員として派遣で働く場合はどうなりますか

2024年度以降、加算の配分は事業所内で柔軟に決められるようになりました。配分の対象には介護職以外の職種も含まれます。看護師や生活相談員、調理員なども対象になり得ます。

もらえていないと確認できたら、返金を請求できますか

できません。加算は事業所に支払われるお金であり、個人が請求権を持つものではないためです。できるのは、これからの時給に反映してもらう交渉です。


まとめ

派遣スタッフも処遇改善加算の対象にできます。ただし、施設が対象に含め、派遣料金に上乗せし、派遣会社が給与に反映するという3つの段階を通ります。

自分の場合にどうなっているかは、給与明細と就業条件明示書を見て、派遣会社の担当者に確認すれば分かります。2026年6月の改定で加算率が上がった今は、確認と相談を切り出しやすい時期です。

制度を知らないまま働き続けると、本来乗るはずの上乗せを取りこぼすことがあります。まずは次の更新の前に、担当者へ一度尋ねてみてください。

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出典

参考 介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版) 問2-4・問4-8厚生労働省 参考 令和8年度介護報酬改定について厚生労働省老健局