認知症の方への接し方・声かけ|NG→OK具体例と3原則【2026年版】

認知症の方への接し方・声かけ|まずは結論

認知症の方への接し方の基本は、本人の世界を否定せず、安心を届けることです。声かけは短く、穏やかに。これだけで多くの場面が変わります。

同じ話を繰り返す、家に帰りたがる、入浴を嫌がる。こうした行動には本人なりの理由があります。叱る・正す・急かすほど不安が強まり、症状(行動・心理症状)が悪化しやすくなります。

この記事では、接し方の3原則と、場面別のNG→OK声かけ例、新人や家族が陥りやすい対応、困ったときの相談先までを一次情報をもとに整理します。すぐ現場で試せる形にしました。

認知症の方への接し方 3原則

厚生労働省は、認知症は誰もがなりうる病気であり、本人は「不安・混乱・悲しみ」を抱えていると示しています(厚生労働省「認知症の人と接するときの心がまえ」2024年時点)。この前提に立つと、接し方の軸は3つに絞れます。

原則1 否定しない(本人の世界を受け止める)

認知症の方には、私たちと異なる「現実」が見えていることがあります。事実と違っても、まず「そうなんですね」と一度受け止めます。否定や訂正は、本人にとって自分を責められた体験になりがちです。

これは、本人を一人の人として尊重するパーソンセンタードケア(その人を中心に考えるケア)の考え方とも重なります。

原則2 急かさない(待つ・ペースを合わせる)

認知症があると、聞いた言葉を理解し、考え、行動に移すまでに時間がかかります。「早く」「まだ?」と急かすと、本人は焦り、かえって動けなくなります。

指示は一度に1つ。返事を待つ間は、笑顔で見守ります。沈黙を埋めようと言葉を重ねないことも大切です。

原則3 尊重する(人生の先輩として接する)

子ども扱いやタメ口は、本人の自尊心を傷つけます。年齢にふさわしい敬意ある言葉を選びます。できないことを指摘するより、できることに目を向けて任せると、表情が和らぎます。

視線を合わせ、正面から、ゆっくり話す。この姿勢は、認知症ケア技法のユマニチュード(人間らしさを尊重するケア。「見る・話す・触れる・立つ」が柱)にも通じます。

3原則はどれも特別な技術ではありません。声をかける前に「自分が同じ立場ならどう接してほしいか」を一度考えるだけで、言葉と表情が自然と変わります。

場面別の声かけ例(NG→OK)

現場で迷いやすい6場面を、NG→OKの形で並べました。そのまま当てはめて使えます。共通するのは「否定しない・理由を探る・安心を渡す」です。

場面 NGの声かけ・対応 OKの声かけ・対応
同じ話を何度も繰り返す 「さっきも聞いた」「何回言うの」と指摘する 初めて聞くように「そうなんですね」と相づち。さらっと答えて話題を変える
帰宅願望(家に帰りたい) 「ここが家です」「帰れません」と抑え込む 「心配ですね」と共感し、一緒に少し歩く。お茶に誘い気持ちをそらす
食事を拒否する 「食べないと困る」と無理にすすめる 「今は食べたくないですか」と理由を探る。好みや量、食べやすさを工夫する
入浴を拒否する 「臭うから入って」と急かす 「お湯加減みましょうか」と誘う。寒い・恥ずかしいなど理由を取り除く
物を盗られたと訴える(物盗られ妄想) 「盗ってない」「妄想です」と否定する 「それは困りましたね、一緒に探しましょう」と共感。本人が見つけられるよう誘導する
同じ場所を歩き続ける 「危ないからダメ」と強く止める 「どちらまで行きますか」と寄り添い歩く。目的や不安を聞き取る

物盗られの訴えで「一緒に探す」ときは、本人の手で見つけられるよう誘導します。介護者が先に見つけると、疑いの矛先が向くことがあるためです(大塚製薬 すまいるナビゲーター 2024年時点を参考)。

中核症状・BPSDを踏まえた工夫

声かけが効きやすくなるのは、症状の仕組みを知ってからです。認知症の症状は大きく2つに分かれます。

  • 中核症状:脳の変化で直接起こる症状。記憶障害、見当識障害(時間や場所がわからない)、判断力の低下など
  • BPSD(行動・心理症状/周辺症状):中核症状に不安や環境が重なって出る症状。不安、興奮、暴言、帰宅願望、ひとり歩きなど

中核症状そのものは戻りにくい一方、BPSDは環境調整と接し方で和らげられると国の資料は示しています(厚生労働省 BPSD関連資料 2009年)。つまり、声かけが届く余地が大きいのはBPSDの部分です。

工夫の方向はシンプルです。本人が困っている理由(暑い・痛い・不安・トイレなど)を先回りして取り除くと、行動は落ち着きやすくなります。症状の全体像は、別記事「認知症の種類と症状」で中核症状とBPSDを詳しくまとめています。

例えば夕方に落ち着かなくなる「夕暮れ症候群」は、疲れや薄暗さによる不安が背景にあります。照明を早めに明るくし、話しかけるトーンを下げて安心を渡すと和らぐことがあります。声かけだけでなく、環境を整える視点もあわせて持つと対応の幅が広がります。

新人・家族が陥りやすいNG対応

悪気がなくても、よかれと思った対応が裏目に出ることがあります。下の表は、特に起こりやすいNGと、その理由です。

陥りやすいNG対応 なぜ避けるか
間違いをその場で正す 本人は責められたと感じ、不安や反発につながる
「さっき言ったでしょ」と責める 忘れたこと自体を思い出せず、混乱だけが残る
複数のことを一度に頼む 処理が追いつかず、固まってしまう
後ろから急に声をかける・触れる 驚いて拒否や興奮を招く。正面から名前を呼ぶ
子ども扱い・命令口調 自尊心を傷つけ、信頼関係が崩れる

家族の場合、毎日の介護で疲れがたまると、つい強い口調になりがちです。それは介護する人なら誰にでも起こります。自分を責めず、後述の相談先を早めに頼ってください。

現場で接し方の引き出しを増やしたい新人には、認知症ケアや声かけの基本を体系的に学ぶ方法が役立ちます。実践技法はユマニチュード、資格としては認知症ケア専門士の学習も選択肢になります。

困ったときの相談先

一人で抱え込まないことが、本人にとっても最善のケアにつながります。無理に解決しようとせず、専門の窓口に早めにつなぎましょう。

  • 地域包括支援センター:高齢者の総合相談窓口。介護や認知症の悩みを無料で相談できる(市区町村に設置)
  • 認知症初期集中支援チーム:医療と介護の専門職が、初期の対応を支援する
  • かかりつけ医・もの忘れ外来:症状の変化や薬、診断について相談できる
  • 認知症の人と家族の会:同じ立場の家族とつながり、経験を共有できる
  • 認知症カフェ:本人や家族が気軽に集まれる地域の場

「どこに相談すればいいかわからない」ときは、まず地域包括支援センターに電話するのが近道です。状況に応じて適切な窓口へつないでくれます。

まとめ|否定せず、短く穏やかに

認知症の方への接し方は、否定しない・急かさない・尊重するの3原則に集約されます。声かけは短く、穏やかに。本人の世界を受け止め、行動の理由を探ることが出発点です。

場面別のNG→OK例を一つでも現場で試すと、本人の表情が変わるはずです。うまくいかない日があっても、それは接し方が間違いだからではありません。理由を探し続ける姿勢こそが、いちばんのケアです。

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