ADL(日常生活動作)とは?種類や評価の方法、低下の原因について解説

ADL(日常生活動作)とは、食事・移動・排泄など毎日の基本動作のことです。介護やリハビリの現場で、利用者の状態を把握する土台になる考え方です。この記事は、現場で利用者の自立度を見る介護・リハビリ職に向けて書いています。ADLの定義、IADLとの違い、評価のしかた、現場での重要性、2024年度介護報酬改定での扱いまで、2026年7月時点の情報で解説します。

この記事でわかること

  • ADL(日常生活動作)とは何か
  • 基本的ADL(BADL)とIADL(手段的日常生活動作)の違い
  • ADLの主な評価指標(バーセルインデックス・FIMなど)
  • 「できるADL」と「しているADL」の違い
  • 2024年度介護報酬改定でのADL維持等加算

ADL(日常生活動作)とは?

ADLとは、人が日常生活を送るために最低限必要な、基本的な動作のことです。Activities of Daily Livingの略で、日本語では「日常生活動作」と訳します。具体的には、起き上がり・立ち上がりなどの起居動作、移乗、移動、食事、更衣(着替え)、排泄、入浴、整容などが含まれます。

ADLは、高齢者や障害のある人がどのくらい自立して生活できるかを測る指標です。医療・介護・リハビリの現場で広く使われています。

BADL(基本的ADL)とIADL(手段的ADL)の違い

ADLは、大きくBADL(基本的日常生活動作)IADL(手段的日常生活動作)の2つに分かれます。BADLは生活の基本動作、IADLは買い物や調理などの応用動作です。

種類 内容 具体例
BADL(基本的ADL) 生活に最低限必要な基本動作 食事・更衣・入浴・排泄・移動・整容など
IADL(手段的ADL) BADLより複雑で、自立した生活に必要な応用動作 買い物・調理・掃除・洗濯・服薬管理・金銭管理・電話・交通機関の利用など

たとえば「食べる」動作そのものはBADLです。一方、「買い物に行って食材を選び、調理し、配膳して片付ける」までの一連の活動はIADLにあたります。一般に、IADLのほうが高い生活機能を必要とし、衰えも先に表れやすいとされます。両方を見ることで、その人の自立度を立体的に把握できます。

ADLの主な評価指標

ADLは、客観的に評価するための指標(評価スケール)で測ります。代表的なものを紹介します。

評価指標 特徴
バーセルインデックス(BI) 食事・移乗・整容・移動など10項目を100点満点で採点。簡便で短時間に評価できる。
FIM(機能的自立度評価表) 運動13項目+認知5項目の計18項目を各7段階で評価(18~126点)。「しているADL」を細かく評価できる。
Katz Index(カッツインデックス) 入浴・更衣・排泄など6領域の自立度をA~Gの7段階で総合判定する。
Lawton(ロートン)の尺度 電話・買い物・服薬管理・金銭管理など8項目で、IADLに特化して評価する。

なかでもバーセルインデックスFIMは、介護・リハビリの現場でよく使われます。バーセルインデックスの10項目や点数の目安、FIMとの詳しい違いは、バーセルインデックス(BI)とは?の記事もあわせてご覧ください。

「できるADL」と「しているADL」の違い

ADLを考えるうえで大切なのが、「できるADL」「しているADL」の区別です。能力としてできる動作と、実際にしている動作は別物です。

  • できるADL:訓練や評価の場面で、最大限の能力を発揮したときにできる動作。たとえばリハビリ室で療法士の見守りのもとなら歩ける状態。
  • しているADL:普段の生活のなかで、実際に行っている動作。能力としてはできても、体力や環境の事情から日常では行っていない動作もある。

リハビリでは、利用者の実際の生活を重視し、「しているADL」を高めることが重視されます。両者の差を埋め、「できる」を「している」に変えていく。これが自立支援の大きな目標です。

介護現場でADLが重要な理由

ADLは、介護現場のさまざまな場面で基礎になります。要介護認定、ケアプラン、状態変化の把握の3つで活用されます。

  • 要介護度の認定:各動作が「できるか」「どのくらい介助が必要か」が、要介護認定の判断材料になる。
  • ケアプラン・リハビリ目標の設定:現状のADLを把握すると、現実的で具体的な目標を立てられる。
  • 状態変化の把握:定期的に評価すると、改善や低下を数値で追える。

ADLが低下すると、活動量や社会参加が減ります。すると心身機能が落ち、さらにADLが下がる悪循環に陥りやすくなります。ADLの維持・向上は、利用者がその人らしい生活を続けるうえで欠かせません。

ADL維持等加算(2024年度介護報酬改定)

介護報酬の制度のなかでも、ADLは重要な役割を担います。代表的なのがADL維持等加算です。これは、利用者のADLを維持・改善できた事業所を評価する報酬の上乗せです。

ADL維持等加算は、一定期間にADLを維持・改善できた事業所を評価する「アウトカム(成果)評価」の加算です。つまり、ケアの成果に対して報酬を上乗せするしくみです。通所介護や特定施設、介護老人福祉施設などが対象です。測定にはバーセルインデックス(100点満点)を使います。データは科学的介護情報システム「LIFE」(介護データを国に提出し分析に活かすシステム)を通じて厚生労働省に提出します。

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、上位区分の加算(II)の基準が引き上げられました。算定に必要な調整済ADL利得が、従来の「2以上」から「3以上」に変更されています(加算(I)は1以上)。単位数は加算(I)が月30単位、加算(II)が月60単位です。ADLを数値で評価し、ケアの成果を見える化する流れは、今後さらに広がる見通しです。

「しているADL」を増やす現場の関わり方と声かけ例

ADLは数値で測るだけでなく、日々のケアで「している」状態へ近づけることが目的です。結論は、できる動作を先回りで奪わず、見守りと小さな成功体験を積み重ねることです。

現場でできる関わり方

  • 全介助の前に「どこまで自分でできるか」を確認し、できる部分は任せる
  • 評価で見た「できるADL」を、生活の場面に少しずつ移していく
  • 転倒や事故のリスクを見極め、安全を確保したうえで動作を促す
  • できた動作はチームで申し送り、関わる職員全員で支援を統一する

自立を引き出す声かけの例

場面 声かけの例
更衣 「袖だけ通してみましょうか。あとはお手伝いします」
移動 「手すりに手を添えて、ゆっくり立ってみましょう」
食事 「このおかずから、ご自分で召し上がってみませんか」

家族への説明のしかた

家族には「できるADL」と「しているADL」の違いを翻訳して伝えると、過介助を防げます。たとえば「リハビリでは歩けますが、ご自宅では転倒が心配で歩いていません。日常でも安全に歩く回数を増やすのが目標です」と伝えると、家庭での関わり方が共有できます。先回りの介助を控え、見守る関わりに変えてもらうことが、自立支援の土台になります。

よくある質問(FAQ)

Q. ADLとIADLの違いは何ですか?

A. ADL(BADL)は食事や入浴など生活に最低限必要な基本動作、IADLは買い物や服薬管理などより複雑な応用動作です。IADLのほうが高い生活機能を必要とします。

Q. ADLはどうやって評価しますか?

A. バーセルインデックスやFIMなどの評価指標を使い、各動作の自立度を点数化します。介護現場ではバーセルインデックスがよく用いられます。

Q. 「できるADL」と「しているADL」はどちらが大切ですか?

A. 両方大切ですが、リハビリでは実際の生活で行う「しているADL」を高めることが重視されます。「できる」を「している」に変えることが自立支援の目標です。

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まとめ

ADL(日常生活動作)とは、食事や移動、排泄など日常生活に必要な基本動作のことです。基本的なBADLと、買い物や服薬管理などより複雑なIADLに分かれます。評価にはバーセルインデックスやFIMといった指標を使います。介護現場では要介護認定やケアプラン、リハビリ目標の土台となり、ADL維持等加算など介護報酬の制度でも重視されています。利用者の自立した生活を支えるうえで、ADLは欠かせない視点です。

「介護やリハビリの現場で働きたい」「経験を活かせる職場を探したい」という方は、お気軽にご相談ください。

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参考(一次情報)

※本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。介護報酬・制度などの最新情報は公式情報をご確認ください。