現場でよく見る介護業界に独特な風景

宇都宮 雅子

現場でよく見る介護業界に独特な風景

施設によって異なる介護職の仕事

新聞や雑誌などではよく「介護職」と一言で表現されますが、働く施設ごとに高齢者の要介護度や症状が微妙に異なり、それに合わせて職務の内容も違ってきます。
また、介護施設には「入所型」「通所型」「訪問型」があります。入所型は高齢者の生活の場であり、1年365日24時間に渡って入所者のお世話をする施設ですので、昼間の勤務だけでなく交代で夜勤をこなす必要があります。通所型は昼間に高齢者が通ってこられる施設、訪問型は介護職が高齢者の自宅を訪問して仕事をするものです。
ここでは介護職を多く採用する施設について、その仕事内容をご紹介しましょう。

特別養護老人ホーム(特養)【入所型】

寝たきりや重い認知症など、常に手厚い介護を必要とする高齢者が入所する施設ですので、介護職の仕事は身体介護が中心になります。食事介助や排泄介助、入浴介助、移動介助、シーツ交換などが主な仕事で、介護職は日勤・夜勤・早番・遅番などに分かれて交代で24時間入所者のお世話をします。2004年現在で全国に約5,300の施設があり、21万人あまりが働いています<※>。

老人保健施設(老健)【入所型】

医学的な指導のもとに自宅に戻るための介護やリハビリテーションを行うことが特徴の施設です。介護職が交代勤務で24時間身体介護を行うことは特養と同じですが、老健では理学療法士の指示に基づいて介護職がリハビリテーションを行うこともあります。3ヵ月程度の入所者が多いので、入所者ひとりひとりの特徴を短期間に把握する必要があります。

有料老人ホーム【入所型】

民間事業者などが都道府県に届け出て運営する施設で、「健康型」「住宅型」「介護付」の3つのタイプがあり、介護職が活躍するのは「介護付」タイプです。入所されている高齢者の状態はさまざまで、要介護度の重い入所者には特養と同じように身体介護を中心に行います。比較的お元気な入所者には、外出の付き添いやレクリエーション活動をサポートします。勤務体制は特養と同じく交代制となります。

ケアハウス【入所型】

要介護度1~2程度の高齢者が対象で、トイレや入浴は自立している入所者がほとんどです。介護職の仕事は身体介護よりも身のまわりのお世話や施設の掃除、身体の衰えを抑えるための運動指導、レクリエーション指導などが中心となります。スタッフの数が少ないため、いろんな業務を幅広くこなす必要があります。

グループホーム【入所型】

要介護1~3程度の認知症の高齢者を対象とした施設です。戸建て住宅などを借り、少人数の高齢者がスタッフと家庭的な環境で暮らします。介護度の重い入所者のトイレ介助や入浴介助などの身体介助をする以外に、比較的お元気な入所者とともに買い物に行ったり、一緒に料理をつくったり家の中の掃除をするなどの家事能力が必要です。また、介護の中でも難しいといわれる認知症の入所者と長時間接することになるので、認知症に対する深い理解と思いやりが求められます。

デイサービスセンター【通所型】

在宅で生活する要介護の高齢者が主に日帰りで訪れる施設で、食事や入浴、日常動作訓練、レクリエーションなどを提供します。主な仕事は、食事介助や入浴介助、レクリエーション指導など。高齢者の自宅まで送迎するので、利用者だけでなくその家族とも日常的に接する機会があることが他の施設と異なる点です。

居宅介護支援事業所・訪問介護事業所【訪問型】

居宅介護支援事業所では、ケアマネジャーが介護保険を利用する高齢者の心身の状況を確かめ、居宅サービス計画(ケアプラン)を作成します。
訪問介護事業所はケアプランに基づいて、高齢者の自宅に身体介護や家事を行うホームヘルパーを派遣します。ホームヘルパーの仕事内容は訪問する高齢者の心身の状況によって異なり、寝たきりの方の排泄介助や清拭などを行うこともあれば、比較的お元気な方の通院や買い物に付き添うこともあります。利用者のご要望や健康状態、ご家庭の状況に応じて求められる仕事内容も変わってきますので、事業所と相談しながらフレキシブルに対応する必要があります。
また、ホームヘルパーのスケジュールを管理し、指導やアドバイスをするサービス提供責任者という職種もあります。

※厚生労働省「平成16年度介護サービス施設・事業所調査」より

必ずしも一致しない資格名と実際の職種

介護施設の求人欄を見ていると、「介護職員募集」や「介護スタッフ募集」といった言葉をよく見かけます。これは施設で介護を行うスタッフを募集するもので、資格が必要な場合は「介護福祉士有資格者優遇」や「ホームヘルパー2級以上」などの条件が併記されています。資格名そのものを指す「介護福祉士募集」という広告はそう多くありません。これは介護業界の特徴で、「資格名と実際の職種が必ずしも一致しない」ことがよくあるのです。
たとえば医療業界の場合、医師は医師の仕事をしますし、看護師は看護師の仕事を担当します。それぞれの資格に応じて仕事の領域が厳密に定められており、資格のない者が医療行為を行うと法的に罰せられることになります。このような資格を「業務独占資格」と呼びます。
しかし、介護関連の資格で業務独占資格にあたるのはケアマネジャーのみ。介護の現場では、介護福祉士が必ずしも介護を行うとは限らず、ホームヘルパーが必ずしも高齢者の家庭を訪問しているわけでもありません。一例を挙げると、介護福祉士に「現在の職種」を質問した調査結果があります。

介護福祉士への調査から実際の職種を見る

■介護福祉士が担当している職種(n=4058)
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社団法人日本介護福祉士会「第5回介護福祉士の就労実態と専門性の意識に関する調査報告書」(2003年3月)より

半数強を占めるのは、やはり「施設の介護職員」。介護施設で実際に食事介助や排泄介助を行っている姿が想像できます。しかし、次に多いのは「ケアマネジャー」の23.5%。介護福祉士がケアマネジャーの資格を取り、ケアプランを作成することを毎日の仕事としている様子がうかがえます。
さらに、「ホームヘルパー」として高齢者の自宅を訪問し、身体介護や家事などを支える人が19.9%。「サービス提供責任者」として訪問介護事業所でヘルパーの訪問計画を作ったり、介護方法を指導する人が12%存在します。
また、1つの有資格者がさまざまな職種に就く一方で、1つの職種に異なる有資格者が就くこともあります。
「サービス提供責任者」は介護福祉士資格もしくはヘルパー1級資格を持つ人か、3年以上の実務経験を持つヘルパー2級資格者が務めることのできる職種です。
調査結果では介護福祉士の8.1%が就いている「生活相談員」は、高齢者施設や障害者施設などで入所者の相談・指導を行ったり、介護の現場全般の管理を行う職種で、主に社会福祉士や社会福祉主事の有資格者が就くものです。

1つの資格取得で終わらない介護の仕事

介護の仕事をスタートしたときは介護福祉士の資格しかなくても、キャリアを重ねてケアマネジャーの資格を取得し、ケアマネジャーに転職する人もいれば、施設の管理職になる人もいます。
ヘルパーからスタートし、実務経験を積み、国家試験を受けて介護福祉士資格を取得後、さらにケアマネジャーや介護教室の講師となる人もいます。
中には無資格で介護施設に勤めるところからスタートする人もいるでしょう。
いずれにせよ、最初から介護のエキスパートだった人は存在しません。現場で経験を重ね知識を身につけ、しっかりとしたスキルとモラルを求めて毎日努力した人が、介護の現場で真に求められる人ではないでしょうか。介護の仕事に就くなら、自分が「どんな仕事をしたいのか」「どんな働き方をしたいのか」をまず見きわめて、5年後10年後のキャリアアップも考えながら、自分に合う就職先を探すべきでしょう。

24時間高齢者を支えるシフト制勤務

当たり前のことですが、要介護度の重い高齢者ほど1年365日24時間に渡り、介護の手を必要とされています。排泄や食事に週末はありませんし、お盆もお正月もありません。そのため、入所型の施設ではシフト制の勤務体制をとり、24時間ケアが行き届くように職員を配置しています。

日勤・早番・遅番、夜勤で構成

■下の図はある入所型施設のシフト制勤務の例です。
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日中の介護は、日勤を中心に早番と遅番で構成されています。早番は朝食に間に合うように出勤し、夜勤とともに朝のケアを行います。遅番は昼食前に出勤し、夕食とその後のケアをすませた後、退勤します。もちろん食事ケア以外にも、排泄介助や入浴介助、散歩、水分補給、レクリエーション指導などの業務が随時入り、そのときどきに勤務しているスタッフで業務を分担し、協力して入所者を介護します。
夜勤は施設に泊まりこんでケアをするスタッフで、排泄や水分補給、体位変換、夜間のナースコールなどに幅広く対応します。夜間の状況などは朝9時の「申し送り」と呼ばれるミーティングで、その場にいるスタッフ全員に共有することになっています。
ここに挙げたのはあくまでも一例で、施設によって多少時間は前後します。また、日勤と遅番の間の中番や勤務時間の短い補助職などを置くところもあり、施設の事情により少しずつ実状は異なります。

正職員は月3~5日の夜勤をこなす

正職員で勤務する場合、日勤を中心に早番・遅番・夜勤を交代で担当することが一般的です。シフトは通常1ヵ月単位で組まれ、週2日の休みを除いた22~3日が勤務日に当たります。このうち、夜勤は月3~5日程度。残りを日勤・早番・遅番に配分されます。
パート職員の場合は、一般的に日中だけ働く勤務体制が多いようです。また、夜間の人手不足を補うために、夜勤専門の非常勤スタッフを雇うところもあります。
施設側から見た人員配置としては、日勤・早番の人数が多めで、遅番・夜勤の人数を少なめにシフトを組むことが多いようです。1ヵ月のシフトは前月20日前後までに組むのが一般的。翌月以降に「この日に休みたい」という予定がある場合は、その月のシフトを組む前に申し出ると、比較的スムーズに休みが取得できるでしょう。

気をつけたい、腰痛対策

介護には、かがんだり、中腰になったり、重いものを持ち上げたりといった腰にこたえる動作が多く含まれており、腰痛と隣り合わせの仕事といえます。私自身、利用者の足浴をするため前かがみになったときギックリ腰になり、以後は使い古しの自転車チューブを腰痛箇所に巻きつけ、介護を行っています。
腰痛自体が誰にでも起こり得る症状であり、20代の若い人にも無縁ではありません。腰痛が原因で、せっかくついた介護の仕事を続けられなくなることがないよう、日頃からできる予防策を講じておきましょう。

腰痛になりやすい要素は?

介護に限らず、腰痛になりやすい理由には以下のようなものが考えられます。
■姿勢が悪い
立っているときよりも座っているときの方が腰に負担がかかります。自分のからだに合わないイスに座り続けるのは避けましょう。
■肥満
太っていると常に重い荷物を抱えているのと同じことになります。また、やせ過ぎも筋力低下を招き、あまりよくありません。
■運動不足
腹筋や背筋がしっかりついていれば、多少の腰痛は乗り越えられます。特にスポーツをしていない人も、普段から歩くことが大切です。
■靴
女性のハイヒールは足だけでなく腰にも大きな負担がかかります。普段から適度に靴底の厚みがあってやわらかく、着地したときに膝や腰にやさしい靴を選びましょう。

腰に痛みを感じたら?

1度腰痛になったら、しばらくは痛みとつきあうことになります。
介護時のみならず普段の生活も腰痛ベルトを装着し、ムリな姿勢をとらないよう心がけます。ただし、痛みが引いたら、腰痛ベルトは外すようにします。
ストレッチやウォーキングを継続して行うことも腰痛対策に効果的です。こうした運動はムリのない範囲で少しずつ行い、毎日続けることが大切。水泳でのクロールや水中ウォーキングも、浮力を利用して腰に負担がかからず、腰痛によいといわれています。
腰痛の種類によっては、ストレッチや運動が逆効果になる場合もあります。痛みがあるときはムリをせず、医師に相談してからはじめましょう。

「中腰での前かがみ」に特に注意!

毎日の介護の中で、特に気をつけたい姿勢は「中腰での前かがみ」です。足浴もそうですが、体位変換や起き上がり・立ち上がりの介助、車いすへの移乗、入浴時の移動など、前かがみになる機会は山ほどあります。ある研究によると、体重70kgの人の腰にかかる力は立っているときが100kg。これが軽くおじぎした状態だと150kgに跳ね上がるとか。それほど前かがみの姿勢は腰に負担がかかると覚えておきましょう。
では、介護の現場では欠かせない前かがみの姿勢を、どうやって乗り切ればいいのでしょうか?
まず、ひざを曲げておしりを落とし、必ず1度はしゃがみこむよう心がけましょう。相手にできる限りからだを近づけ、持ち上げるときは腰ではなく足の力でゆっくりと行います。忙しいときは面倒と感じるかもしれませんが、腰痛に苦しまずにすむことを思えば決してムダな動作ではありません。

福祉用具を利用して未然に予防

福祉用具を利用して、腰痛の原因になる動作を減らすこともできます。
ある程度からだを動かせる利用者の場合、ベッドでの体位変換や起き上がり・立ち上がりは介護ベッドを使うことで、かなり腰への負担が軽減されます。ベッドの高さを上下させて、自分の身長に合った高さ・腰に負担のかからない高さに調節。背上げ機能で利用者の上半身を起こし、上下機能で利用者の足裏がしっかり床につく高さに調節すると、ベッドからの立ち上がりの介助もラクになります。また、体位変換には最新の自動体位変換マットを利用することも考えられます。
全介助の利用者の場合は、ベッドまわりや浴室にリフトを設置することで、腰に負担のかかる介助を取り除くことができます。

介護職も意外に知らない介護保険制度

2000年4月、介護保険制度が登場し、介護の世界は一変しました。
従来は「措置制度」と呼ばれ、行政(市町村)が利用者に行うサービスを決定していました。しかし、介護保険制度では利用者がサービス事業者を選んで「契約」を結び、自分の受けたいサービスを受けるシステムに変わりました。行政から施されるサービスではなく、利用者が自分で選ぶことによって本当に受けたいサービスを受け、事業者間の競争によりサービスの質そのものも向上させるのがねらいです。また、その財源は40歳以上の国民が負担する「介護保険料」によってまかなわれることになりました。
制度が発足して6年あまり。介護保険はどの程度、浸透したのでしょうか?

制度を知らなくても介護はできる

私ごとで恐縮ですが、私がヘルパー資格を取得した1994年には、「介護保険」という言葉さえ聞いたことがありませんでした。
ところが、2000年4月の介護保険施行後、様相が一変しました。
私たち登録ヘルパーは臨時研修の中で「介護保険制度」について教えられました。とはいっても、説明を受けたのは自分たちの時給に関わる訪問介護サービス費のことだけ。ケアマネジャーの登場やケアプランの内容、施設も含めた制度の全容は、知るよしもありませんでした。また、現場では昨日までと同じようにヘルパーの仕事がつづき、知らなくてもこれといって不自由はありません。サービス提供責任者の指示に従って、今週も利用者宅を訪問する・・・ヘルパーは目の前の利用者さんのことを考えるのが最優先なので、それですんでしまう部分が多々ありました。

研修会やネット・印刷物を利用して情報収集

私が本格的に介護保険制度を勉強したのは、ライターの仕事で必要に迫られたからでした。初心者向けの解説本を何冊か読み、ネットを通じて情報を集めて、「なるほど、そういうものだったのか」と得心しました。ヘルパーだけやっていたなら、今でも介護保険制度をほとんど知らないままだったでしょう。
ところがこの介護保険制度、高齢化社会の現状を常に見極めながら運営されているため、3年おきに改正が検討されます。
覚えてもまた変わる・・・介護の世界を深く知ろうとすると、つねに勉強が欠かせないことを痛感させられます。
介護職として施設や事業所に所属していれば、市町村や職場の研修・勉強会である程度学ぶことができるでしょう。サービス内容や制度の改正があれば、事業者向け・住民向けに資料を作成して配布する自治体が少なくありませんから、役所や福祉センターなどでこうした資料をこまめに収集しておくと役に立ちます。
さらに深く介護の制度を知るには、自力でコツコツ調べることになります。解説本は初心者向けから専門家向けまで幅広く出版されています。また、手軽に情報を検索できるインターネットは介護職にとって心強い味方です。
以下は、参考になりそうなサイトをご紹介します。

● 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/
いわずと知れた介護保険制度の根幹を決定する国の機関。制度について審議された内容や調査結果が、随時アップロードされています。

● WAMNET
http://www.wam.go.jp/
独立行政法人 福祉医療機構が運営するサイト。介護関連の情報が集められ、制度発足当時は介護職のバイブル的な存在でした。

●All About 「介護・福祉業界で働く」
http://allabout.co.jp/career/careerwelfare/
介護・福祉の最新情報を初心者向けにわかりやすく解説しています。

ネットだけでなく、専門誌や新聞などもご紹介しておきます。

● 環境新聞社/シルバー新報
http://www.kankyo-news.co.jp/silver/index.html
毎週金曜日発行の介護・福祉専門紙です。

● お元気!介護ジャーナル
http://www.kaigo110.co.jp/journal/kj/number/year/month/
カラーで読みやすい月刊誌です。